生命保険で準備できる4つの保障分野と社会保障制度
生命保険には数多くの商品があり、一見複雑に見えますが、その保障分野は4つに分けることができます。4つの保障分野と該当する生命保険商品を、それぞれに紐付けられる社会保障制度とあわせて見てみましょう。
4つの保障分野と保障内容
表 4つの保障分野と該当する生命保険商品
4つの保障分野 | 生命保険商品 | 社会保障制度 |
---|---|---|
死亡保障 | 定期保険、終身保険など | 遺族基礎年金、遺族厚生年金 |
医療保障 | 医療保険、がん保険など | 医療保険制度 |
老後保障 | 個人年金保険 | 老齢基礎年金、老齢厚生年金 |
介護保障 | 介護保険 | 介護保険制度 |
資料:執筆者作成
遺族の生活に備えるための死亡保障
死亡保障とは、被保険者が死亡した場合、遺された家族がその後の生活に困窮することがないよう準備する目的のものです。
社会保障制度の死亡保障は、遺族基礎年金や遺族厚生年金があります。また、会社に勤めている方が死亡したとき、会社から遺族へ死亡退職金・弔慰金が支給される場合もあります。
死亡保障を有する生命保険には、次の商品があります。
- 定期保険
- 終身保険
- 収入保障保険
定期保険は、お手頃な保険料で手厚い死亡保障が得られる保険商品です。保険期間は一定期間で保険料は掛け捨てのため、満期保険金はありません。また、解約返戻金はほとんどないか、あってもごくわずかです。
終身保険は、名前の通り終身(一生涯)の死亡保障を得られる保険商品です。満期保険金はありません。途中解約すると解約返戻金が支払われますが、保険料払込期間中に解約すると保険料払込総額を下回ることがほとんどです。掛け捨て型の定期保険と比較すると保険料は一般的に高くなりますが、解約返戻金額が低く設定され保険料がお手頃な低解約返戻金型の商品もあります。
収入保障保険は、定期保険・終身保険が保険金を一括で受け取るのに対し、年金形式で受け取ることができる点が特徴の保険商品です。つまり、保険期間の経過により保険金の受取総額が減っていきます。その分、定期保険よりもさらにお手頃な保険料となっています。商品によっては、優良体(健康体)料率・非喫煙者料率で保険料がお手頃になる場合もあります。なお、保険期間は定期保険と同様に一定期間です。
生命保険で準備する死亡保障の金額は、下図に基づいて算出することができ、これを必要保障額積み上げ方式と言います。
支出見込額(遺される家族に必要な支出)-収入見込額=死亡保障の不足額を、生命保険などで補う必要があります。
図 必要保障額積み上げ方式
※1 計算式:現在の年間生活費×70%×(末子の独立時の年齢-末子の現在の年齢)
※2 計算式:現在の年間生活費×50%×末子独立時の配偶者の平均余命
資料:執筆者作成
病気・ケガにかかる医療費に備える医療保障
医療保障とは、病気やケガをして医療機関で治療を受ける際にかかる、さまざまな費用について備える目的のものです。
社会保障制度の医療保険制度は、個人事業主・自営業の方が加入する国民健康保険と、会社員・公務員の方が加入する健康保険・共済組合に分けられており、以下の給付を受けられます(出産手当金・傷病手当金は健康保険・共済組合のみ)。
- 支払う医療費の自己負担が1割~3割で済む「療養の給付」
- 医療費の自己負担額が一定の金額を超えた場合は超過分が払い戻される「高額療養費制度」
- 出産費用や出産のために仕事を休んだ期間の収入をカバーする「出産育児一時金・出産手当金」
- 病気やケガを原因として仕事を休んだときの収入をカバーする「傷病手当金」
医療保障を有する生命保険には、次の商品があります。
- 医療保険
- がん保険
- 就業不能保険
医療保険は、入院給付金と手術給付金を基本保障としており、その他にも通院にかかる費用や特定疾病、生活習慣病、女性疾病をカバーする特約があります。
がん保険の保障はがんのみを対象としており、がんと診断されたら受け取れる診断給付金や、支払限度日数が無制限の入院給付金など、がん治療に特化した商品設計となっています。
就業不能保険は、病気やケガで働けなくなった際の収入をカバーするものです。「所得補償保険」とも呼ばれます。
病気やケガをした際にかかる医療費は、基本的にはその多くを社会保障制度によりカバーできますが、以下の費用については社会保障制度の対象外です。
- 先進医療技術料、自由診療の治療費
- 入院中の食事代、差額ベッド代
- 通院、お見舞いにかかる交通費
加えて、療養中は患者本人とサポートする家族ともに、仕事を休んだり辞めたりすることで収入に影響を及ぼすことも少なくありません。特に、個人事業主・自営業の方は傷病手当金を受給できないため、収入の減少はより深刻な問題です。
医療保障を有する生命保険商品は、社会保障制度だけではカバーできない費用について備えることができます。医療保険のうち健康増進型保険は、健康診断の結果や健康増進活動により、保険料の割引や還付を受けられるメリットがあります。
リタイア後の生活に備える老後保障
老後保障とは、仕事をリタイアした老後の生活費に備える目的のものです。
社会保障制度の老後保障は、老齢基礎年金や老齢厚生年金があります。加えて、企業型確定拠出年金(企業型DC)、個人型確定拠出年金(iDeCo)、国民年金基金など、自助努力の制度も用意されています。
老後保障を有する代表的な生命保険商品が個人年金保険です。保険料を払い込んで資金を積み立てることで、契約時に定めた年齢から年金形式で保険金を受け取れます。公的年金の上乗せ資金やつなぎ資金として役立つ保険です。
年金の受取期間などによって、いくつかの種類があります。
- 確定年金:被保険者の生存・死亡を問わず、契約時に定めた一定期間(5年や10年など)受け取れる
- 有期年金:被保険者が生存している場合に限り、契約時に定めた一定期間(10年や15年など)受け取れる
- 終身年金:契約時に定めた年齢から被保険者が死亡するまで受け取れる
介護にかかる費用に備える介護保障
介護保障とは、介護が必要になった際にかかる介護費用について備える目的のものです。
社会保障制度の介護保険制度は、40歳以上の方が対象の公的保障です。65歳以上の方は第1号被保険者、40歳~64歳の医療保険加入者は第2号被保険者となります。
第1号被保険者は、要介護・要支援状態になった原因を問わず介護サービスを受けられますが、第2号被保険者は、要介護・要支援状態になった原因が加齢に起因する特定疾病によるものでないと、介護サービスを受けられません。
介護保障を有する生命保険商品には介護保険があります。社会保障制度の介護保険制度と違って年齢による要件はなく、所定の要介護状態が一定期間(180日間など)継続した場合に保険金を受け取れます。
なお、社会保障制度の介護保険制度は介護サービス自体が提供される現物給付、生命保険商品の介護保険は保険金による現金給付です。
ライフステージごとに必要な保障は変わる
4つの保障分野の必要性は、年齢・性別・人生設計によって異なります。どの保障がいつまで必要なのか、ライフステージごとに見直す習慣をつけましょう。
監修者プロフィール
佐藤 益弘サトウ ヨシヒロ
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP®、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、住宅ローンアドバイザー
株式会社優益FPオフィス 代表取締役。
Yahoo!Japanなど主要Webサイトや5大新聞社への寄稿・取材・講演会を通じた情報提供、ライフプラン相談&実行サポートをするライフプランFP®として活動している。NHK「クローズアップ現代」「ゆうどきネットワーク」などテレビ番組への出演も行い、産業能率大学兼任講師(主査)、日本FP協会評議員も務める。
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- ※ この記載内容は、当社とは直接関係のない独立したファイナンシャルプランナーの見解です。
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- ※ 掲載日は2022年3月3日です。
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