“先進医療”ってどんなもの?“先進医療特約”は、絶対つけるべき??

最近CM等でよく耳にする“先進医療”。「加入中の医療保険に“先進医療特約”をつけていないのですが、新しく入り直した方が良いでしょうか?」というご質問をよく受けます。
確かに、最近の医療保険の大半は“先進医療特約”が付加できるようになっています。
ただ、慌ててご加入の保険を切り替えたりする前に、まずは“先進医療とは何か?” “本当に必要なものなのか?”を考えてみましょう。
“先進医療”ってどんなもの?
健康保険の診療で認められているレベルを超える最新の医療技術のうち、厚生労働省が定めた医療行為のことをいいます。
平成26年3月1日現在で69種類[第3項先進医療(先進医療B)技術として規定されている40種類を除く]が承認されています。
- 技術料は「高額療養費制度」の対象外なので、全額が自己負担となります。 ただし、先進医療にかかる費用以外の、診察、検査、投薬、入院料等の通常の治療と共通する部分は、一般の保険診療と同様の扱いとなります。
- 技術ごとに決められた適応症に対し、基準と適合する医療機関で行われる治療に限るため、先進医療が実施可能な医療機関は限定されています。
- 先進医療とは、将来保険診療の対象にするかどうか検討中の技術のことで、今後、保険診療の対象になる可能性もあれば、先進医療の対象から外れる可能性もあります。
- 固形がん治療における“重粒子線治療や陽子線治療等は200万~300万円程度かかる”という例から“技術料が高い”というイメージが強いですが、実際の技術料は治療内容によって数万円~数百万円と様々で、施設によっても異なります。
医療保険の“先進医療特約”は絶対必要なの?
上記に挙げた“先進医療”による技術料の費用負担に備えるための保険が“先進医療特約”です。
支払要件に該当した場合、契約限度額までの給付金を受け取ることが出来ます。
通常、単品での加入はできず“医療保険やがん保険”に特約として付加しますが、がん保険に付加できる“先進医療特約”は、がん治療にかかわる先進医療のみが対象となるため、がん以外の病気までカバーするためには“がん保険”ではなく“医療保険”に先進医療特約を付加する必要があります。
先進医療の特約保険料は各社とも月額約100円前後のケースが多いですが、保険は“助け合い”の制度なので、加入者が支払う保険料と支払われる給付金の総額はバランスを保つことになるはずです。
100円程度の保険料で、数百万円の先進医療を受けた人への給付が成り立つとすれば、実際に、給付金を受け取れる確率は非常に少ないということが推察できますね。
実際、1年間で先進医療を受けた全患者数は14,505人、そのうち、高額治療の代名詞ともいえる“重粒子線治療と陽子線治療”は合算して2,381人(表より)と、全体の16%程度にすぎません。
平成22年7月1日~平成23年6月30日までに行われた、先進医療の実績数

※1 施設で複数の先進医療技術を実施している場合でも、1施設として計上している。
※2 1施設で第2項先進医療と第3項先進医療(高度医療)の両方を実施している場合でも、1施設として計上している。
出典:中央社会保険医療協議会 第218回総会 実績報告より 抜粋
保険給付の対象となる治療を受けて給付金が貰えたら「加入しておいて良かった!」となりますが、先進医療は技術や条件が限定されており、実際に多額の給付を受けられる確率はかなり低いのが現状です。
先進医療特約に加入したいがために、加入中の割安な保険を解約して最新の保険に加入し直したり、重複して給付が受けられるように全ての保険に特約を付加したりする必要はないように思います。
ただ、現時点での保険料は月額100円程度ですので、今から保険に加入される場合は、付加されると安心かもしれないですね。
次回は、“先進医療特約の注意点”についてお話しします。
先進医療は保険診療の対象外!?自己負担額を軽減するために!
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コラム執筆者プロフィール
合田 菜実子 (ゴウダ ナミコ) (マイアドバイザー.jp®登録) - ファイナンシャルプランナー、キャリアカウンセラー。
消費者向けの家計セミナーやFP資格取得講座等の講師業の他、フリーペーパーやWEBコラム等の執筆や個人相談業務等も行っています。
“お金の知識を分かりやすく楽しく伝える”をモットーに、出会った人々に安心感を与えられるようなファイナンシャルプランナーを目指しています。

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コラム監修者プロフィール
山本 俊成 (ヤマモト トシナリ) (マイアドバイザー.jp®登録) - ファイナンシャルプランナー。
大学卒業後、株式会社三和銀行(現三菱UFJ銀行)入社。
2003年、外資系生命保険会社入社。
2005年、総合保険代理店株式会社ウィッシュ入社。
2010年、株式会社ファイナンシャル・マネジメント設立。
銀行と保険会社に勤めていた経験を活かし実務的なコンサルティングを行う。
ファイナンシャルプランナー 合田 菜実子
※この記載内容は、当社とは直接関係のない独立したファイナンシャルプランナーの見解です。
※掲載されている情報は、最新の商品・法律・税制等とは異なる場合がありますのでご注意ください。
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掲載日:2020年1月17日
先進医療の医療技術にはどのくらいの種類があるの?
先進医療の医療技術にはどれくらいの種類があるのか、詳しくみていきましょう。
先進医療は、第2項先進医療(先進医療A)と第3項先進医療(先進医療B)に分類されています。
未承認等の医薬品もしくは医療機器の使用または医薬品もしくは医療機器の適応外使用を伴わない医療技術、および未承認等、適応外の体外診断薬の使用を伴う医療技術であって、当該検査薬等の使用による人体への影響が極めて小さいものが先進医療Aに分類されます。
令和元年12月1日現在、先進医療Aは29種類、先進医療Bは57種類あります。
このうち、多く行われている先進医療には「多焦点眼内レンズを用いた水晶体再建術」や「陽子線治療」、「重粒子線治療」などがあります。
厚生労働省「令和元年6月30日時点における先進医療Aに係る費用」によると、多焦点眼内レンズを用いた水晶体再建術は年間33,868件、陽子線治療は年間1,295件、重粒子線治療は年間720件実施されています。
多焦点眼内レンズを用いた水晶体再建術が最も実施数の多い先進技術であり、白内障の治療で実施されるものです。
また、陽子線治療や重粒子線治療はがん治療として知られています。
なお、先進医療の各技術の概要については厚生労働省のホームページで確認することができますので、参考にしてみてください。
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掲載日:2019年7月30日
がん治療で使われる先進医療の種類
がんの治療には、主に「放射線治療」「外科治療」「薬物療法(化学療法)」が挙げられ、これらは「三大治療法」などと称されます。
放射線治療で用いられる先進医療としては、「陽子線治療」・「重粒子線治療」が挙げられます。
陽子線治療・重粒子線治療は、従来までの放射線治療よりも副作用が少ないというメリットがあります。
課題のひとつとして、施設に広大なスペースを確保する必要があり、特に、重粒子線の施設には、サッカー場ほどの広さが必要ともいわれています。
それだけに、陽子線治療・重粒子線治療は先進医療のなかでも高額治療の例でよく挙げられています。
白内障で用いられる先進医療
がん以外の先進医療で有名なのが、白内障の治療で行われている「多焦点眼内レンズを用いた水晶体再建手術」です。
白内障の治療として、単焦点眼内レンズで再建する方法では、焦点が一つしかないため、人によっては術後に不便がかかる場合もあります。
一方で、先進医療の再建術では、多焦点眼内レンズが用いられ、術後のQOL(クオリティ オブ ライフ)向上に貢献します。
QOLは「生活の質」ともいわれ、肉体的・精神的・社会的・経済的などを含めた生活を意味し、自分らしく充実感や幸福感のある日常生活を目指すという考え方です。
また、多焦点眼内レンズを用いた水晶体再建手術は実施している医療機関が多く、希望者が多いため、先進医療のなかでも件数の多い治療として知られています。
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