思考と挑戦が成長に不可欠である理由 - 僕が考える理想の指導者像(原 晋さんコラム - 第2回)

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みなさん、こんにちは。原晋です。

このコラムでは、今までの指導経験などをもとに、今求められる理想の指導者とは何か、また指導者はどうあるべきかをテーマにお話しさせていただいています。第1回では、つらい時期の乗り越え方やチームとのビジョンの共有方法などを通して、理想の指導者像をお話しさせていただきました。

第2回は、現代社会において最も重要な人材育成のこと、特に若い世代をいかに育てるかについてお話しします。

半歩先の目標を目指して、正しい努力をさせる

人をいかに育てるか。これは社会にとって永遠のテーマです。時代によって人材育成のスタイルは変わっていきます。現代のように変化が激しく、価値観が多様化した時代には、メンバーそれぞれの個性や可能性を引き出すことが、真に強い組織をつくるうえで何より重要です。そのためには、指導者が一方的に教えるのではなく、メンバー自ら主体的に成長していくような指導が有効です。僕自身そのような手法で選手を育ててきました。

前提として、人は本来、誰しも自分が所属する組織のために貢献したい、そのために成長したいという思いをもっています。特に今の若い人は、その思いが一段と強いと感じています。その思いをいかに引き出し、その人の成長や結果にどのように結び付けるかを考え、そのための環境づくりやフォローをすることが、指導者の最大の役目だと思います。

人の成長のプロセスは、大きな目標から逆算して小さな目標を設定し、そこに向けて努力していくことです。その小さな目標をクリアしたら、新たな目標を立て、繰り返し達成に向けて努力をする。ここで大事なのが、実現可能な半歩先の目標設定を意識することです。本人の力量以上の目標を定めてしまっては、挫折を繰り返し、いつかはつぶれてしまいます。若者のやる気を引き出すうえで最も大事なことは、小さくてもいいから成功体験を積ませることです。一度でも自分の努力で目標を達成する喜びを味わった者は、どんどんチャレンジしていくことができます。

最初のうちは、メンバーが自ら適切な目標を立て、正しい努力を続けることは難しいかもしれません。自分の実力や立ち位置を正確に把握できなかったり、良くなかった点になかなか気付けなかったりもします。そのようなメンバーの個性や状況に応じて、どれだけフォローしてあげられるか。それによって彼らの成長速度は大きく変わります。

そのような適切なフォローをするには、メンバーのことをよく知らなくてはなりません。みんなが気軽に相談できたり、不満や不安を口に出せたりする雰囲気も大切です。指導する側のちょっとした言葉の使い方によって、結果は大きく変わります。若手を育てるうえで最も重要なコミュニケーションについては次回、さらに詳しくお話ししたいと思います。

自分の頭で本質を考えさせることが大事

昔のスポーツ界には、監督や先輩から言われたことにはとにかく「ハイ!」と答え、言われた通りにすべきという風潮がありました。ビジネスや教育の現場でも、上司や教員の言うことを素直に聞く人間が優等生という考えが、日本には根付いているようです。でもイノベーションや新しい発想が求められるこれからの時代、それでは到底やっていけなくなるでしょう。言われたことをそのまま疑わずにやるのはまさに「思考停止」であり、そこから現状を打破する進歩や飛躍は生まれてこないからです。

僕は青山学院大学陸上競技部で選手を指導するうえで、何ごとも常に自分の頭で本質を考えさせることを意識してきました。なぜそのような練習をするのか。目的をしっかり伝えるとともに、選手にもその意味を自ら考えてもらうようにしました。それを経て次の段階からは、目標を達成するうえで最も有効な練習方法を考えてもらいました。

よく分からないことを言われたままやるのと、本質を理解したうえで自主的に取り組むのとでは、結果は大きく変わります。自分や組織にメリットがあると分かっていれば、誰だって意欲的に取り組むことができます。

個人の目標と達成までのプロセスを、メンバー全員で共有することも大事です。仲間で議論することによって考えが深まり、より良い取り組みへと進化します。目的達成への意欲が高まり、チームの結束も強固なものになります。青山学院大学陸上競技部でも各自が作成した「目標管理シート」をもとに、ランダムに選んだ6人のグループで行うミーティングが、選手の成長やチームの強化に大きくつながっています。

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©塩島真吾

失敗を恐れずチャレンジできる環境をつくる

僕たちはこれまでの常識がどんどん通用しなくなる時代を生きています。新しい発想、新しい価値を生み出さないと、組織は生き残っていけなくなります。だからこそ、リーダーや管理職はメンバーに自分の価値観を押し付けるのではなく、メンバーの個性や可能性を引き出す必要があるのです。そしてメンバーは、自分の可能性を開くためにも新しいことにどんどん挑戦すべきです。

ただ、今の若者は安定志向が強く、未知のものに挑戦するチャレンジ精神に欠けているようにも思います。厳しい時代に育ったこともあり、失敗を恐れる気持ちが強いのです。結果がどうであれ、一生懸命考え、挑戦した経験はその人の血肉になります。失敗を重ねた分だけ、成功は近づきます。そう考えれば、失敗することはただの失敗ではありません。一番の失敗は、失敗を恐れ、何も行動しないことです。ですからリーダーには、メンバーが新しいチャレンジをしやすい環境をつくり、背中を押してあげてほしいのです。

結果ではなく挑戦したプロセスを評価すること、新しいことを最初から否定しない文化を組織に根付かせることも大事です。僕は何ごとも最初から否定しないようにしています。今の状況がどうあれ、どんなに難しく思えることでも、まずは未来志向でどうすればできるかを考えます。それを考えるのがリーダーの仕事です。前例がないから、などという理由で若手の斬新なアイデアをつぶすなんてあってはいけません。

最後に、メンバーを育てるには、リーダー自身がメンバー以上に成長していかなくてはなりません。もちろんリーダーは万能ではありません。若手のほうが得意なことも沢山あります。ですから、若いメンバーから謙虚に学んでいきましょう。上意下達ではなく、夢や理念、ノウハウを共有しながらみんなでともに成長していく。それがこれからの時代に求められる人材育成のスタイルだと思っています。

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PROFILE

原 晋(はら すすむ)

原 晋(はら すすむ)

青山学院大学 地球社会共生学部 教授、陸上競技部 長距離ブロック 監督

1967年広島県生まれ。広島県立世羅高等学校を経て中京大学に進学し、全日本インカレ5,000mで3位入賞。卒業後は陸上競技部第1期生として中国電力(株)に進むも、故障に悩み競技生活から引退。1995年、同社で会社員として再スタートするが、2004年に長年低迷していた青山学院大学陸上競技部監督への就任話が舞い込む。契約3年目に箱根駅伝出場を逃し監督辞任のピンチを迎えたが、ビジネスで培ったプレゼン力で猶予を得て、2009年に33年ぶりの箱根駅伝出場。2020年の箱根駅伝では、大会新記録で5度目の総合優勝を果たし、再び頂点に返り咲く。主な著書に『フツ――の会社員だった僕が、青山学院大学を箱根駅伝優勝に導いた47の言葉』(アスコム刊)等。

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